はじめに
『ケーキの切れない非行少年たち』という本で、コグトレという名前を知った方も多いかもしれません。最近は学校や放課後等デイサービスでも取り入れられています。
このノートでは、コグトレとは何か、どんな種類があるのか、発達障害とどう関係するのか、家でどう取り入れられるのかを整理します。
1. コグトレとは何か
コグトレは「認知○○トレーニング(Cognitive ○○ Training)」の略で、認知機能強化トレーニング(COGET)・認知作業トレーニング(COGOT)・認知ソーシャルトレーニング(COGST)の3つの総称です。児童精神科医の宮口幸治さんが考えたトレーニングです。宮口さんは医療少年院で働くなかで、見る・聞く・覚える・想像するといった認知の力の弱さから、勉強だけでなく、人とのやりとりや生活でもつまずいている子どもたちに出会いました。
コグトレは、そうした土台の力を、紙と鉛筆のワークや体を使った課題で育てていくことをめざしています。
2. 3つのコグトレと、学習の5つの柱
- 学習面:認知機能強化トレーニング(COGET):勉強の土台になる力
- 社会面:認知ソーシャルトレーニング(COGST):気持ちを読みとる、問題を解決するなど、人とのやりとりの力
- 身体面:認知作業トレーニング(COGOT):自分の体を思いどおりに動かす力
学習面のコグトレは、次の5つの力に分けて練習します。
- 覚える:見たもの・聞いたものを覚える
- 数える:ものを数える、ルールに合うものを数える
- 写す:点と点をつないだ図形を、そのまま写す
- 見つける:たくさんの中から、同じ形や違う形を見つける
- 想像する:向きを変えたら、裏から見たらどう見えるかを考える
3. コグトレと発達障害の関係
コグトレは、発達障害のある子どものためだけのものではありません。ただ、見る・聞く・覚えるといった力に苦手さがあり、勉強や生活でつまずきやすい子にとって、土台の力を遊び感覚で練習できることから、療育や特別支援教育の場で広く使われています。
一方で、コグトレをすれば困りごとがすべてなくなる、というものではありません。その子の苦手さに合わせた課題を選ぶこと、楽しく続けられることが大切です。
4. 家で取り入れるなら
- 1日数問から:プリント1枚でも十分。毎日少しずつ
- やさしい問題から始める:「できた」が続くほうが、長続きします
- まちがいを責めない:どこを見ていたのか、一緒にふり返る
- 体を使う課題も混ぜる:机に向かうのが苦手な子は、体のコグトレから
- 本や無料の教材を使う:書籍のほか、学会のサイトで紹介されている教材もあります
5. たぶのメモ
正直に言うと、私はインタビューの前、「コグトレを取り入れた事業所」という、ひとつの先入観を持って臨んでいました。だから終盤、Kさんから「コグトレは、ただの一部です」と言われたとき、はっとしたんです。
Kさんがやっていたのは、豆腐づくりという日々の作業そのものを、一人ひとりの生きづらさと向き合う“道具”に変えていくことでした。
出典:就労継続支援B型事業所とコグトレ|「1ヶ月働いて3000円」(note)
結び
コグトレは、勉強の手前にある「見る・聞く・覚える・想像する」を育てるための道具です。
できないことの裏に、土台の力のつまずきがあるかもしれない。そう考えてみると、子どもへのまなざしも、少しやわらかくなります。
参考資料
- 宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』新潮新書、2019年
- 宮口幸治『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』三輪書店、2015年
- 一般社団法人日本COG-TR学会
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
