毎日の関わり方
Q1. 何度言っても、同じことをくり返します。
言っても言っても同じことのくり返しだと、本当にくたびれますよね。ここからは、たぶ先生の考えです。たぶ先生も「どうして言っても言っても、言うことを聞いてくれないのか」と書いています。「走っちゃダメ」と前もって伝えても、「座ってください」と言い方を変えても、それでも走り出してしまう子はいます。
たぶ先生自身の目安として、3回声をかけても、その子の様子に変化が見られなければ、自分の声かけはその子には届いていない、と考えるそうです。そのときは「この子は、その子なりによかれと思って、あるいはやむにやまれず、そうしているんだろう」という目で見ます。
学校を巡回する心理士の方は、何回言っても指示が入らない子には、先生に「名前を一回呼んでから、もう一度言ってあげてください」と伝えるそうです。自分に言われているとわかりにくい子や、耳からの情報が断片的になりやすい子がいるからです。長い話ではなく、一つの文に一つの意味で伝えることも勧めています。
もっと読む:発達障害の子に「手を出さない」支援|その先の願いへ(note)/特別支援教育の巡回心理士とWISC検査|「みんなと同じ」では、届かない(note)
Q2. 手を出したほうがいいの? 見守るべき?
迷いますよね。たぶ先生は、手伝いすぎ、やってあげすぎは、その子の力をかえって下げてしまうことがある、と書いています。「オーバーヘルプ」という言い方で教わったそうです。
あえて手を出さないのは、その子の行動のねらいがつかめないときです。そのままにして、その子が何を目指しているのかを観てみます。手を引く場面は、その子にとってギリギリの難しさだったり、はじめての挑戦だったりします。失敗が世界の終わりくらい怖い子もいます。それでもやろうとしている。その葛藤を見守る時間の中で、ストレスに耐える力や「自分で選ぶ力」が少しずつ育つ、とたぶ先生は考えています。
「見守る」と「ほったらかし」の分かれ道は、見守る側の意識がどこを向いているか、だそうです。「何かあったらすぐ助けるよ」という構えのまま、さりげなくそばにいる。気持ちが子どものほうを向いていなければ、それはほったらかしです。
逆に、よかれと思って先回りしすぎると、「やさしさの押し売り」になることもあります。わからないなりに、そばにいる。それが伝わることのほうが大事な場面もある、とたぶ先生は書いています。
もっと読む:発達障害の子に「手を出さない」支援|その先の願いへ(note)
Q3. じっと座っていられず、急に走り出してしまいます。
同じ「走る」でも、中身はまるで違うと、たぶ先生は書いています。ひとつは、何かに目を引かれて、そちらに行きたくて走る子。もうひとつは、本当は座っていたいのに、体のつくりや感覚の都合で座り続けるのがどうしても難しくて、走り出してしまう子です。じっと座っていると自分の体がどこにあるのかわからなくなって不安になり、走って体に刺激を入れ、ボディイメージという感覚を取りもどそうとしている子もいるそうです。
見分けるために、たぶ先生はその子の目線をたどって、同じ方向を自分も見てみます。何回か続けるうちに、止まりたいのに止まれない子なのか、何か意図があって走る子なのかが見えてくることがある、と言います。わからないときも、見立てが合っているかわからないときも、たくさんあるそうです。
走りたくて走っていて、走っても大丈夫な場所なら、無理には止めません。ただ、車の通りや飛び出し、お友だちとぶつかる危険は、いつも見ているそうです。止めるときは腕をつかむのではなく、自分の腕をシートベルトのように胸元に回して、そっと抱きとめているそうです。出入り口に先回りして立ち、「ここから先は行かせないよ」と体で示すほうが、後ろから追いかけるより、その子は安心して走れる、とのことです。
気づいたら走り去っていて、追いかけるばかりという保護者の方には、目よりも手に頼ることをすすめているそうです。服の袖や裾をそっとつまんでおき、引き留めるためではなく、体が動いたことにいち早く気づくためのセンサーにする方法です。
これは、たぶ先生が現場で行っているやり方です。お子さんの様子や安全に合わせて、合うやり方を探してください。
もっと読む:発達障害の子の衝動性を見きわめる|「わたしは子ども達の何を観ているんだろう」(note)
Q4. やる気はあるはずなのに、動けません。怠けているわけではないのでしょうか。
発達障害と聴覚障害のある児童指導員の方(大人の当事者です)は、「やる気はあるんですけれど、それが伝わらない」と話しています。職場で「塗り絵を補充しておいて」と頼まれたとき、何枚入れればいいのか基準がわからず、手が止まりました。そのまま見ないようにしてしまい、周りからは困っているように見えなかったそうです。
この方は言葉のやりとりは人並みなのに、動作の面がとても低く、その差が大きいそうです。だから「できるのに、なんでやらないの」と誤解されやすい、と病院の先生にも言われました。
助けになったのは、タイマーを使うこと、「5時半までに」ではなく「あと45分で」と分で伝えてもらうこと、曖昧な指示ではなく具体的に伝えてもらうことでした。一度にいくつも言われると抜けおちるそうです。たぶ先生は「なんでやらないの」と問いつめる前に、こちらから伝え方を変えてみる、という見方を持っておきたいと書いています。
もうひとつ。ADHDの当事者の方は、人の3倍くらい努力して「普通よりちょっと下」まで自分を底上げしていても、その努力は外から見えない、と話しています。できているように見えるからこそ、過度に期待され、応えられないと「できない人」と見られてしまう。「すこしでもわかってくれる人がいたら、引きずらずに次にいけた」という言葉が、たぶ先生の心に残ったそうです。
もっと読む:発達障害と聴覚障害の児童指導員|「やる気はあるのに伝わらない」を越えて(note)/ADHD当事者で歯科衛生士|「心からの味方が、人間に居ないんです」(note)/ワーキングメモリ(用語集)/合理的配慮(用語集)/ADHD(注意欠如・多動症)(用語集)
Q5. 間違えると、パニックになります。失敗をとても怖がります。
就労継続支援B型の事業所を運営する方(Kさん)が、10年近く通っている20代後半の男性(Tさん・仮名)のことを話しています。通いはじめたころのTさんは、挑戦することが本当に怖くて、間違えることが「この世の終わり」のようだったそうです。ちょっとこぼしたり、段取りを間違えたりすると、取り乱して飛び出してしまうこともありました。
変わるきっかけのひとつが、コグトレの「点つなぎ」でした。やっていくうちに「間違っても消せばいい。もう一回やり直せばいい」ということを学んでいったそうです。
それはコグトレだけでなく、日々の作業を通して、少しずつ根づいていきました。「失敗しても、やり直せばいい」「練習すれば、ちょっとずつ上手くなる」。今は、嘘みたいにパニックが起きなくなった、とKさんは話しています。時間がかかった変化だったことも、あわせて覚えておきたいお話です。
もっと読む:就労継続支援B型事業所とコグトレ|「1ヶ月働いて3000円」(note)/コグトレ(用語集)
学び・勉強
Q6. 勉強させたいけれど、どう関わればいいかわかりません。
「勉強してほしい、勉強させたい。でも、どう関わればいいかわからない」。たぶ先生は、そんな保護者の方に向けて、オンライン家庭教師「いっかく」を始めました。診断はないけれど、学校の授業やみんなと同じやり方だとうちの子にはどうも難しいらしい、というご家庭も対象です。
たぶ先生は、療育の現場にある「勉強は二の次でいい」という空気に、ずっと疑問を持っていました。挫折させたくない、できないことを突きつけたくない、というやさしさが、もしかしたら学ぶ機会そのものを子どもから取りあげていたのかもしれない。学習塾を営む先生の「学習は福祉から排除されている」という言葉で、そう気づいたそうです。「配慮することと、あきらめることは、違う」というのが、たぶ先生の立場です。
いっかくの家庭教師は、決まったカリキュラムがありません。その子の考え方のくせや、好きなもの、ペースに合わせて、内容を一緒につくっていきます。たぶ先生は、集団では落ち着きがない子が、一対一だと驚くほど集中する場面を、たくさん見てきたそうです。
もっと読む:発達特性の子のオンライン家庭教師・療育相談「いっかく」受付開始(note)/発達特性の子の学習塾を営む先生の言葉|「一滴が、石を割る」(note)/グレーゾーン(用語集)
Q7. 「なんで勉強しなきゃいけないの?」と聞かれて、答えに詰まります。
学校を巡回する心理士の方は、「世間ではこう言うから」「いい大学に入りましょう」という言葉は、発達特性のある子には納得しづらいことが多い、と話しています。ご自身もそうだったそうです。
おすすめしているのは、その子の幸せをお母さん、お父さんがどう考えているかを、具体的に言ってあげることです。そのためには、まず親御さん自身が、自分の幸せを具体的に考えてみる。何が大事か。何が幸せか。何が好きか。どうして好きか。
それを言えるようになると、「お母さんにとってはこれがすごく大事なんだよ」と子どもに伝えられます。それが子どもの指針になる、と考えています。世間一般の物差しが通用しないという前提で子育てしたほうが、大変だけれど楽しい、とも話していました。
もっと読む:特別支援教育の巡回心理士とWISC検査|「みんなと同じ」では、届かない(note)
Q8. 周りの子と同じようにできてほしい、と思ってしまいます。
そう思うのは、親として当然の願いだと、たぶ先生は書いています。療育の現場でも、保護者の方からの要望の多くが「周りの子と同じようにできるようになってほしい」だそうです。
そのうえで、こんな話をしています。「跳び箱が跳べるようにしてください」と相談してくれたお母さんに、「お母さんは跳び箱跳べますか?」と聞くと、だいたい「私は跳べないんですけど…」と返ってくる。それでもそのお母さんは、30年、40年と立派に生きてこられたはずです。もしかしたら、体育の時間につらい思いをした、その気持ちを、わが子に重ねているのかもしれない。たぶ先生は、そんなふうに想像しています。
もちろん、社会には合わせなければいけない部分もあります。左ききの人が改札やお習字で不便を感じるのと同じで、折り合いをつける部分は、みんなそれぞれにある、とも書いています。それでも、跳び箱が跳べないままでも、その子の人生はちゃんと続いていく。「みんなと違っても大丈夫」「あなたはあなたのままで価値がある」と伝えたい、というのがたぶ先生の願いです。
跳び箱の練習も、別の方法が見えてくる、と書いています。実は、ちょっとしたコツがあるそうです。
もっと読む:発達障害の子と原始反射|伸びていく方向へ(note)
学校・園・療育との付き合い
Q9. 学校に行きたがりません。無理にでも行かせたほうがいいですか?
たぶ先生は、お仕事では保護者の方にも子どもにも「学校は、行けるなら行っておいたほうがいいと思います」とお話ししてきました。ところが、自分の子が夏休み明けにぐずると、「行け」と言ってしまうそうです。玄関で送り出しながら、頭のもう半分では、こうやって送り出すことが子どもにはストレスになっていないか、と葛藤しています。
高校の先生で、3人のお子さんが学校に行っていないというお父さんは、最初の2年ほどは「行かないのが悪い」「行かせられない親が悪い」と悩み、子どもを車で引きずるように送っていった、と話しています。上のお子さんが食べなくなり、眠れなくなり、痩せていって、そこでやっと「これはやばい」と気づいたそうです。それからは無理に行かせることはしなくなり、いまは親も開き直り、子どもたちも「これはこれでいい」と思えてきたようです。それでも悩みは尽きない、とも話しています。
不登校の子が集まる学校の支援教室を担当している先生は、「クラスに戻すことがゴールじゃない。その子自身が幸せなら、何でもいい」と話しています。本人が「戻りたい」と言うときは後押しする。でも、その子が求めていないのに「クラスに行けるように頑張ろうね」と言っても、響かない、という考えです。
もっと読む:「全否定されているようにしか感じない子たちが、いっぱいいた」──診察室で「別世界」を見た体育教師。ASDの生徒、不登校の我が子3人、高校通級のいま(note)/不登校の子が集まる学校の支援教室|「クラスに戻すことがゴールじゃない」(note)
Q10. 学校の先生には、どんな関わり方をお願いすればいいですか?
学校を巡回する心理士の方が、先生方にお伝えしている工夫があります。先生とお話しするときの材料になるかもしれません。
ひとつは、みんなへの指示のあとで、その子の名前を呼んで、「○○くん、これはこうするんだよ」と、その子への指示にしてもらうことです。もうひとつは、話を短く、一つの文に一つの意味で伝えてもらうことです。
大声で怒鳴るのは、いちばんよくないそうです。直接怒鳴られるのもつらいし、ほかの子が怒鳴られるのを聞いて強く反応してしまう子もいます。かといって、優しいだけでもうまくいかないことがあります。ときにピリッとしながら、短い言葉で「あなたの責任はこれ」と、大人の都合ではなくその子のためとわかるように伝えることが大事、と話しています。
「今はできなくてもいいよ。怠けてるわけじゃないんだもんね」。分かってくれる先生が、ただそう言ってくれるだけで、その子にはすごく嬉しいことだそうです。
もっと読む:特別支援教育の巡回心理士とWISC検査|「みんなと同じ」では、届かない(note)
Q11. 園や療育で「ルールを守って、揉めずにできていますよ」と言われます。安心していいですか?
児童発達支援で働く児童指導員の方は、年長さんのクラスで「けんかが全くない」ことが気になっている、と話しています。「かして」「ごめんね」はすぐ言える。でも、気持ちが伴っていないように見える。上辺のルールを、わかりすぎてしまっているのではないか、と。
保護者の方は「ちゃんとできていましたね」と喜ばれるそうです。ただ、その方は、本当は嫌なときは嫌と言っていいし、怒ってもいい、と考えています。小学校に上がったら、そういう場面はたくさんあります。ここで気持ちを出してくれたら「こういうときはこうしようね」と支援できる、というお話でした。別の支援員さんも、本当は嫌なのに「どうぞ」と貸してしまい、あとで「本当は嫌だった」と泣いてしまう子の例を話しています。
就労継続支援B型の事業所の方は、やりたくなくても「はい」と言ってしまう青年に、「嫌なことは嫌と言っていいんだよ」と伝え続けたそうです。お母さんは、将来グループホームで言いなりになってしまうのではと心配していました。その方は、8年間「やりたくないです」と言えていたことを、意思表示として生かされている、と受けとめています。
では「嫌だ」をどう教えればいいのか。たぶ先生は、その伝え方で合っているのか、自分も悩みながら関わっている、と書いています。答えはまだ出ていないそうです。
もっと読む:「プログラムを立てると、できちゃうんですよ」──けんかのない年長児クラスに、支援者は何を見ているか。児発・放デイの支援者と読むガイドライン(オ)「人間関係・社会性」(note)/就労継続支援B型事業所とコグトレ|「1ヶ月働いて3000円」(note)
検査・体のこと
Q12. WISCの結果を、どう受け取ればいいですか?
学校を巡回する心理士の方は、学校に検査結果があっても、先生たちは見方がわからないことが多い、と話しています。そこで、WISCなどの検査のデータと学校での様子を合わせて、「この子にとって、世界はこう見えている」と読み取り、先生に「指示の出し方はこうしたほうがいい」「黒板の使い方はこうしたほうがいい」と伝えているそうです。
たとえば、算数はすごくできるのに国語が全然わからない。図形だけが極端に苦手。漢字は書けるのに音読は嫌い。そうした細かい要素が組み合わさって、その子に世界がどう見えているか(認知、インプット)は、ものすごくバラバラです。その形は、検査にもかなり表れる、と話していました。
同じ指示をしても、ついて来られない子がいるのは、怠けているからではありません。見えている世界が、それぞれに違うからです。検査の数字は、その子の世界を知り、関わり方を考えるための手がかりになります。なお、点数の読み方そのものについては、このお話では詳しく触れられていません。
もっと読む:特別支援教育の巡回心理士とWISC検査|「みんなと同じ」では、届かない(note)/WISC(ウィスク)(用語集)
Q13. 原始反射って、気にしたほうがいいですか?
たぶ先生は、最近「原始反射」という分野に出会い、自分にとって大きな発見だった、と書いています。原始反射とは、赤ちゃんがお母さんのお腹から出てくるために、そして1歳くらいまで持っている、反射的な動きのことです。ご飯を食べて、立ち歩けるようになるまで、とても大事な働きをします。ふつうは、成長とともに消えていきます。
でも、何らかの理由でこの原始反射が残っていると、学習や行動に影響することがある、といいます。たとえば、授業中にじっと座っていられない子。これまでは「集中力がない」「しつけの問題」と思われがちでしたが、座って勉強するのを邪魔してしまう反射が体に残っているのかもしれない、という考え方もできます。
たぶ先生は、その子の行動を「問題」ではなく「体からのメッセージ」として受け取ることで、サポートの仕方が根本的に変わる、と感じています。叱らず、嫌なことを無理にさせずに、体の土台から整えていけるかもしれない、と。まだ療育の世界では珍しいアプローチで、可能性を感じている、という段階のお話です。
原始反射の残りと学習や行動との関係は、そう考える人がいる一方で、まだ確かめられてはいません。
もっと読む:発達障害の子と原始反射|伸びていく方向へ(note)/原始反射(用語集)
親のこころと家族
Q14. 毎日クタクタで、家の中だけでは抱えきれません。
デンマークで自閉症の息子さんを育てた日本人のお母さんは、息子さんが不登校だった5年間、ほぼ毎日、家で2人きりで過ごしました。家の中で暴れたり大声を出したりするので「本当に毎日クタクタだった」と話しています。
そのお母さんが、いちばん大事だと言うのは「家だけで抱え込まないこと」です。どこかに手をあげる。そこがダメなら、また違うところへ。決して諦めない。早いうちから社会に手をあげ、介入を求めていくことが大事、と話していました。
支えになったのは、自治体の費用で、週2回、2時間ずつ家に来てくれたコンサルタントでした。その間に買い物や散歩に出られたそうです。お母さんは、心理学者、教育者、保育者、食事をつくる人、代弁者と、いくつもの顔を抱えて、「純粋なママ」の顔を出せなくなる。プロがその役割を引き受けてくれたから、いまは週末に、ただのお母さんとして息子さんと会えている、と話しています。
もうひとつ、「親が自分の人生を諦めないこと」も大事、と話していました。これはデンマークの制度の話ですが、日本でも家族ごと支える仕組みが広がってほしい、とも語っています。たぶ先生は、支援とは、家族から「労働」をそっと引き受けて、関係を返すことでもあるのかもしれない、と書いています。
もっと読む:デンマークで自閉症の息子、13歳の巣立ち|「できることは全部僕にしてくれた」(note)
Q15. 夫と子どもがぶつかります。家族で関わり方が合いません。
ASDの娘さん2人を育てるお母さん(ご主人はASDグレーゾーン)が、ご家庭の様子を話しています。宿題のとき、ご主人は「やらないといけない理由」を一生懸命説明します。でも、子どもに伝わる言葉ではなく、大人と話すような言葉を選んでしまう。次女さんはその言葉に引っかかり、余計に宿題ができなくなるそうです。
お母さんは、次女さんが今どういう状態で何を言いたいのかを、会話の中で探ります。テンションを上げて勢いで流れをつくる、一緒にやってみる、話し言葉を選び変える、伝え方を変える、いろんな角度から投げかける。どれかが次女さんの中の理屈に合えば、「すとんと落ち着く」ので、どれかが刺さればラッキー、という気持ちだそうです。
お母さんは、夫と次女さんの対立ひとつでも、家の中の「循環」が悪くなると感じていました。ご主人に直接言うと関係が悪くなるので、言えないまま気を遣い、その影響が子どもに出る。そこで、自分が何に引っかかっているのかという、自分の内側を見て整えることを続けたそうです。
気持ちを、AIに整理してもらった文章にして渡したとき、ご主人は「一度読んだだけで、よくわからなかった。よくわからなかったけど、もう一回読もうと思う」と返してくれました。乗り越えたわけでも、解決したわけでもない。それでも、少し歩み寄れた、と話しています。
もっと読む:ASDの姉妹とグレーゾーンの夫と暮らす母|自分の内側を見つめる理由(note)/自閉スペクトラム症(ASD)(用語集)
Q16. 子どもに、特性のことをどう話せばいいですか?
ASDの娘さん2人を育てるお母さんは、「発達障害だよ」という方向からは話していないそうです。かわりに「あなたには、こういうときにこうなる癖があると思う。そのときこうやったら少しでもやる気が出る、というのを見つけられたら、動けるかもね」と話しているといいます。
迷いながら、ときには怒りながらも、続けているそうです。ある日、寝る前の支度で、いつもは断固拒否する長女さん(小6)が布団を敷いてくれました。そして「ママ、あたし、やる気のないときにこうやったらいいかもっていうのを見つけたかも」と言ってくれたそうです。お母さんは、それをとても嬉しく聞いたと話しています。
お母さんは「療育の知識は全然なくて、自己流なんです。大丈夫なんですかね」と尋ねています。たぶ先生は「大丈夫どころか、素晴らしい」と答えています。発達障害という名前は、「なんでやろうな」「随分困ってるな」を紐解くために出てきたもの。本や動画で学び、目の前の子を見て、また学びに戻る。その行き来が、いい関わりのサイクルになっている、という見方です。
もっと読む:ASDの姉妹とグレーゾーンの夫と暮らす母|自分の内側を見つめる理由(note)
Q17. この子の将来が、どうしても不安です。
以前、ある保護者の方から「この子の将来が、どうしても不安で」とこぼされたとき、たぶ先生は、はっきりした答えを持ち合わせていなかった、と書いています。ただ、その子が今日、目の前で夢中になっていたことを、そのままお伝えしました。そういう小さな瞬間の積み重ねが、遠い将来につながっていく気がする、とも。
たぶ先生の願いは、その子に輝いていてほしい、ということです。伸び伸びと、好きなことや発揮できる力を使って活躍できているといい。「自立」という言葉は、今でもよくわからないそうです。頼れる先を増やすことが自立だ、という考え方もあります。「幸せ」は、努力の末に手に入るものではなく、ふと訪れる瞬間のものと、「あの頃は幸せだったな」と思える一定の時期のもの、とたぶ先生は捉えています。幸せの形は、その子にしかわからないから、決めつけたくない、とも書いています。
療育の会社を経営する杉野さんは、「できるようになりたい」という気持ちを否定しません。そのうえで、「成長できなくても、生活の幅は持てる」「できないこと一点で、人生すべてが無理かと言われると、そこは違う」と話しています。生き方は一つではない、という考えです。目指しつつ、手放すこともできる。そんな構え方もあるのだと思います。
もっと読む:発達障害の子に「手を出さない」支援|その先の願いへ(note)/「成長できなくても、生活の幅は持てる」──療育の会社を経営する杉野貴彦さんに聞く、何のために稼ぐのか、そして不完全なものへの愛おしさ(note)
Q18. 学校を卒業したあと、18歳より先はどうなるのでしょうか。
たぶ先生も、ずっと「18歳の先が見えない」ことが不安だった、と書いています。特別支援学校を出たあと、子どもたちはどこへ行くのか。誰が見てくれるのか。そこで、就労継続支援B型の事業所で働くサービス管理責任者の方(Kさん)に話を聞きました。
Kさんは、特別支援学校の手厚さに驚いたそうです。1、2年生ごろから、一般就労か福祉的就労かを考えはじめ、3年生ごろには行き先を決めます。Kさんが知っている学校では、先生が一緒に事業所に来て、卒業後も5年間、夏と冬ごろに様子を見に回ってくれるそうです。「卒業して、パツンと切れることはない」と話していました。どの学校でも同じとは限りません。
Kさんの事業所には、23歳から85歳までの13人が通っています。B型は、雇用契約を結ばずに、働く機会や訓練を受けられる福祉サービスです。内容は事業所によって違います。Kさんの事業所は豆腐づくりをしていて、働くだけでなく、学ぶ時間も大切にしています。Kさんは、工賃を月2万円くらい出せる仕事にしたかった、と話しています。
変化は、月や年の単位でゆっくり訪れます。十数回目に「百点だね、卒業だね」と声をかけたら、やりたがらなかった作業をやってみる気になった人。7年かけて、新聞紙の箱が形になった人。たぶ先生は「時間をかけていい場所が、18歳の先にちゃんとある。それだけで、少し呼吸が楽になった」と書いています。
もっと読む:「一生懸命考えるけど、俺の人生じゃないから」——特別支援学校を出たあとの、20年、30年。発達障害・知的障害のある人と働く就労継続支援B型のサビ管に聞いてみた(note)/就労継続支援B型事業所とコグトレ|「1ヶ月働いて3000円」(note)
