はじめに
「発達障害ではないけれど、ちょっと気になるところがあります」。健診や学校面談で、そんな言い方をされて戸惑った方もいるかもしれません。
この「グレーゾーン」は、よく使われる言葉ですが、診断名ではありません。このノートでは、グレーゾーンとは何をさす言葉なのか、どんな困りごとが起きやすいのか、どう向きあえばよいのかを整理します。
1. グレーゾーンとは何か
グレーゾーンは、医学の診断名ではなく、日常で使われる言い方です。発達障害の診断基準を満たすほどではないけれど、特性が見られ、生活のなかで困りごとがある状態を指して使われます。
発達障害の診断は、特性の「ある・なし」ではなく、特性があって、そのために生活や学校に支障が出ているか、という点で判断されます。特性が強く出ていても困りごとが少なければ診断がつかないことがあり、逆に診断基準にあと一歩でも、本人は大きく困っていることもあります。
特性は、はっきり線を引けるものではなく、濃い人から薄い人まで、連続して分布していると考えられています。「グレーゾーン」という言葉は、その連続のなかのどこかにいる、というイメージで使われます。
文部科学省の2022年(令和4年)12月の調査では、通常の学級に在籍する小中学生のうち、担任などの回答で「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒は8.8%でした。これは診断を受けた子の割合ではありません。35人学級で約3人というのは、単純に計算した目安です。診断の有無にかかわらず、困りごとをかかえる子は少なくありません。
2. グレーゾーンの子に見られやすい困りごと
特性の中身は人によってちがいますが、ADHDやASD、LDの傾向に近い困りごとが見られます。
- 診断がないため、周囲に理解されにくい:「普通の子なのに、どうして」と見られがち
- 家では落ち着いて、外で疲れる:学校で頑張りすぎて、帰宅後に崩れる
- 自分でも理由がわからないまま苦しむ:「自分はだめだ」と思いこんでしまう
- 支援が受けにくい:診断を前提にする制度やサービスを使いにくいことがある
「軽いから大丈夫」ではありません。診断がないぶん、困りごとが見落とされ、二次障害につながりやすいという指摘もあります。
3. 診断と支援の考え方
大切なのは、診断名がつくかどうかよりも、今、何に困っているのかです。診断がなくても、学校に相談したり、家庭でのくふうを取り入れたりすることはできます。
支援を受けられるかどうかは、自治体や学校、サービスによって扱いがちがいます。診断書がなくても相談できる窓口もあります。まずは、学校の先生や、地域の発達支援センター、教育相談などに声をかけてみるとよいでしょう。
診断を受けるかどうかは、メリットと負担の両方を考えて、ご家庭で決めてよいことです。診断を受けたあとに、「名前がついて安心した」と感じる方もいれば、「受けなくても支援は工夫できた」と感じる方もいます。
4. 家や学校でできるサポート
- 困りごとを具体的に書き出す:「何が」「どの場面で」「どのくらい」を、先生や相談員に伝えやすくする
- 特性に合わせた工夫を試す:見通しの提示、指示の短さ、チェックリストなど(ADHDやASDのページの工夫も参考になります)
- 休める場所を確保する:頑張った日は、家でゆっくりできる時間を
- 得意なことや好きなことを大切にする:自己肯定感を支える
- 「診断がないからこそ」ていねいに様子を見る:成長や環境の変化で、困りごとが変わることもあります
5. たぶのメモ
オンライン家庭教師「いっかく」は、発達特性やグレーゾーンで、学校の授業や通常のやり方だと学びにくさのある、小学生〜高校生に向けたものです。こんな方に、と思い浮かべたのは、次のようなご家庭です。
診断はないけれど、学校の授業やみんなと同じようなやり方だと、うちの子にはどうも難しいらしい。福祉のサービスにはつながっているけど、学習や勉強のことは相談できない。勉強してほしい、勉強させたい。でも、どう関わればいいかわからない。
配慮することと、あきらめることは、違う。学びの機会を確保したり充実させる側に、私も立ちたいと思っています。
出典:発達特性の子のオンライン家庭教師・療育相談「いっかく」受付開始(note)
結び
グレーゾーンという言葉は、その子を分類するためではなく、「見落とさないで」というサインとして使いたい言葉です。
診断名がなくても、困っていることは本当です。目の前の困りごとから、一緒に手立てを探していきましょう。
参考資料
- American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
- 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」2022年
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
