自閉スペクトラム症(ASD)とは?意味と具体例
東北大学院卒の発達障害学習ノート

たぶ先生(いわおひろあき) ・ 2026.10.13

はじめに

「目が合いにくい」「予定が変わると大きく崩れる」「好きなことは何時間でも話す」。そんな様子から、ASDという言葉を知った方もいるかもしれません。

ASDは、育て方や愛情不足が原因ではありません。脳の発達のしかたの違いによるもので、生まれつきのものと考えられています。くわしいしくみは研究が続いています。このノートでは、ASDとは何か、どんな困りごとが起きやすいのか、他の発達障害との関係、家や学校でできるサポートを整理します。

1. ASD(自閉スペクトラム症)とは何か

ASDは Autism Spectrum Disorder の頭文字で、日本語では自閉スペクトラム症と呼ばれます。アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5(2013年)では、次の2つの特徴が、幼いころから続いていることが目安になります(ここでの説明は簡単にしたものです。診断には、決まった基準をいくつも満たす必要があり、医師が判断します)。

  • 社会的コミュニケーションと対人関係の難しさ:会話のやりとり、表情や身ぶりの読みとり、友だちとの関係づくりがむずかしい
  • 限定された行動・興味、こだわり:同じ行動のくり返し、決まった手順や予定への強いこだわり、特定のものへの強い関心、感覚の過敏さや鈍さ

「スペクトラム」は「連続体」という意味です。特徴の強さも、現れ方も、人によって大きくちがいます。以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」などと分けて呼ばれていましたが、DSM-5ではまとめてASDと呼ぶようになりました。

2. ASDの子に見られやすい困りごと

次のような場面でつまずきやすいと言われます。もちろん、全員に当てはまるわけではありません。

  • ことばを字義どおりに受けとる:「ちょっと待って」の「ちょっと」が何分かわからない
  • 相手の気持ちや場の空気を読みとりにくい:悪気はないのに、思ったことをそのまま言ってしまう
  • 急な変更が苦手:見通しが立たないと、強い不安になる
  • 音・光・においなどに敏感:運動会の音楽や教室のざわめきがつらい(感覚過敏)
  • 好きなことへの集中力が高い:興味のある分野では、大人顔負けの知識をもつ子もいます

困りごとだけでなく、強みも同じ特性から生まれます。正直さや記憶力など、こういう力を持つ人もいます。得意なことは一人ひとり違います。

3. 他の発達障害との関係

ASDは、ADHDやLD、DCDなど、ほかの発達障害と重なって現れることがよくあります。診断基準の上でも、DSM-5ではASDとADHDを両方診断できます。

知的障害をともなうASDの子もいれば、知的な遅れのないASDの子もいます。知的な遅れがない場合、幼いころは目立たず、学校生活や集団のなかで困りごとがはっきりしてくることもあります。

原因については、遺伝的な要因など多くの研究が進められていますが、まだわかっていない部分も多くあります。「親の関わり方のせい」という説は、現在は否定されています。

4. 家や学校でできるサポート

  • 見通しを見える形で伝える:予定表、写真やイラスト、タイマーで「いつ、何を、どのくらい」を示す
  • 指示は短く具体的に:「ちゃんとして」ではなく「いすに座って、足を床につけよう」
  • 変更は早めに、理由もそえて:急な変更はできるだけ減らし、避けられないときは事前に知らせる
  • 感覚のつらさをやわらげる:イヤーマフ、静かな休憩場所、服のタグを切るなど
  • 好きなことを入り口にする:興味のあるものを使って、勉強や会話の練習につなげる
  • 気持ちのことばを教える:「いやだったんだね」「びっくりしたんだね」と、代わりに言ってあげる

行動の前後を観察するABA(応用行動分析)や、ソーシャルスキルトレーニングも、療育の場でよく使われています。合うかどうかは子どもによってちがうので、様子を見ながら選んでいきましょう。

5. たぶのメモ

僕は、自閉症や発達障害の方たちは、ものの見方とか、ご自身の感じる感覚とか、考える道筋が、定型発達の人とは違う方たちなのかなと思っています。だから「何がいいことなのか」を話し合うと、そもそもがズレていたりする。その話し合いをまず成立させることから難しい、と感じています。

日本はハイコンテキストな文化とよく言われます。空気を読むとか、ニュアンスを察するのは、自閉症やアスペルガーの人たちにとって相当難しい。だから、感覚や考え方、受け取り方の違いを言葉に出して、ゆっくり時間をかけて擦り合わせていくのは、とっても素敵だなと思いますし、個人的にも好きな活動なんです。「それってどういうこと?」「どうしてそう思うの?」というやり取りは。

出典:デンマークで自閉症の息子、13歳の巣立ち|「できることは全部僕にしてくれた」(note)

結び

ASDは、「できない子」ではなく、「感じ方や考え方の道すじがちがう子」と言ったほうが近いかもしれません。

その子にとってわかりやすい形で、伝え方を工夫すると、取り組みやすくなることがあります。まわりの伝え方を変えることも、大切な支援のひとつです。

参考資料

  • American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
  • 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
  • 文部科学省「特別支援教育について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。

保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー

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