はじめに
運動会のピストルの音で耳をふさぐ。服のタグを嫌がる。特定の食べ物をどうしても食べない。「わがまま」「好き嫌い」と言われがちですが、本人にとっては、本当に耐えがたい刺激であることがあります。
それが感覚過敏です。このノートでは、感覚過敏とは何か、種類、発達障害との関係、家や学校でできるサポートを整理します。
1. 感覚過敏とは何か
感覚過敏は、音・光・におい・味・触れる感覚などの刺激を、ほかの人より強く感じ、苦痛やストレスになる状態です。
反対に、痛みや暑さ寒さに気づきにくいなど、刺激を感じにくい状態は感覚鈍麻と呼ばれます。一人の中に、過敏なところと鈍いところが同居することもあります。
なお、感覚過敏だけを示す診断名はありません。DSM-5では、ASDの特徴のひとつとして、「感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ」が項目に入っています。ただし、ASDでなくても、感覚過敏がある人はいます。
2. 感覚過敏の種類と、困りごと
- 聴覚:掃除機や運動会の音、大勢のざわめき、突然の大きな音がつらい
- 視覚:蛍光灯やまぶしい光、日差しが痛い、動くものが気になって集中できない
- 触覚:服のタグや縫い目、靴下、髪を洗う・切る、人に触られることを嫌がる
- 味覚・嗅覚:特定の食感や味、においに強い拒否感があり、食べられるものが限られる
- その他:人混み、高いところ、体を揺らす遊具などがこわい
過敏さは、体調や気分、疲れによっても変わります。「昨日は大丈夫だったのに」と言われやすいですが、日によってちがうことはよくあります。
3. 発達障害との関係
感覚過敏は、ASDのある人に多いとされていますが、ADHDなど、ほかの特性でも見られることがあります。ASDのページで紹介したように、DSM-5では診断の項目に含まれています。
感覚の処理の問題を、遊びや運動を通して整えていく感覚統合という考え方も、療育の現場でよく用いられます。ただし、その効果については、研究でも見方が分かれる部分があります。
「慣れれば平気になる」と、無理に刺激にさらすのは逆効果になることがあります。つらさが増して、その場面そのものを避けるようになることもあるからです。
4. 家や学校でできるサポート
- つらい刺激を減らす:イヤーマフ、ノイズキャンセリングのイヤホン、サングラスや帽子、タグなし・縫い目の少ない服
- 逃げ場を用意する:静かな部屋、保健室、休憩できる場所
- 事前に予告する:「このあと、大きな音がするよ」と先に伝える
- 食事を無理強いしない:食べられるものから広げる。少量から、においの少ないものから
- 本人のことばを信じる:「気のせい」と言わず、「それはつらいね」と受けとめる
- 自分の苦手を伝える練習:「音が大きいから、耳をふさぎたい」と言えるように
学校には、座席の位置、照明、音への配慮などを相談できます。本人がつらいと感じる場面を具体的に伝えると、先生も動きやすくなります。
結び
感覚過敏は、気持ちの弱さではなく、感じ方の個性のひとつです。
まわりの人が「そんなに?」と思うことでも、その子にとっては、本当に痛かったり、苦しかったりします。まず信じることから始めてみてください。
参考資料
- American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
