はじめに
赤ちゃんの手のひらに指を置くと、ぎゅっと握り返してくる。大きな音にびくっとして、両手を広げる。こうした動きは、赤ちゃんが生まれつき持っている原始反射です。
最近は「原始反射が残っていると、姿勢や集中に影響する」という話を聞くことも増えました。このノートでは、原始反射とは何か、代表的な種類、発達障害との関係、そして家でどう向きあえばよいかを整理します。
1. 原始反射とは何か
原始反射は、赤ちゃんが自分の意思とは関係なく、決まった刺激に決まった動きで反応するしくみです。おっぱいを吸う、危ないときに身を守るなど、生まれてすぐの命を支える役割があります。
脳や体が育ち、自分の意思で体を動かせるようになると、原始反射はだんだん目立たなくなっていきます。反射によって時期は違い、多くは乳児期のうちに弱まっていきます。この流れは、療育では「統合」と呼ぶこともあります。乳幼児健診で反射を確かめるのは、発達の様子を知る手がかりになるからです。
2. 代表的な原始反射
- モロー反射:大きな音や、体がかくっと傾いたときに、両手をぱっと広げて、抱きつくような動きをする
- 把握反射:手のひらや足の裏にふれると、ぎゅっと握る
- 吸てつ反射:口や唇にふれると、吸う動きが起こる
- 非対称性緊張性頸反射(ATNR):あお向けで顔を横に向けると、顔の向いた側の手足が伸び、反対側が曲がる
- ガラント反射(背反射):背骨の横をなでると、そちら側に体を曲げる
3. 原始反射と発達障害の関係
成長してからも原始反射の動きが残っているように見える子がいて、それが姿勢の崩れ、座っていられなさ、字の書きにくさなどと関係しているのではないか、という考え方があります。体を動かす遊びで反射が弱まるようにうながす取り組み(「統合」と呼ばれます)も、療育の現場や家庭で行われています。
ただし、原始反射が残っていることと、発達障害との関係については、まだ研究が十分ではない部分もあります。原始反射だけで、子どもの困りごとのすべてが説明できるわけではありません。
原始反射の残りは、脳性まひなど神経の病気を見つける手がかりとして、医学で使われてきました。一方で、残っていることで発達障害を説明したり、特定の運動で発達障害がよくなったりするという考えには、まだ確かな根拠がありません。
大切なのは、「反射が残っているから」と決めつけることではなく、その子の体の使い方をよく見て、動きやすい環境や遊びを用意することです。
4. 家でできる体あそび
- はいはい・クマ歩き:手と足を交互に動かす遊び。床の上でいっしょに競争する
- 寝返りゴロゴロ:布団の上で、左右にゆっくり転がる
- ゆらゆら遊び:ブランコやバランスボールで、ゆっくり揺れる感覚を楽しむ
- 体の真ん中を越える動き:右手で左のひざをタッチする、などの交差あそび
- 無理にやらせない:楽しめる範囲で。いやがる動きは、その子にとってこわいのかもしれません
5. たぶのメモ
最近、ぼくは「原始反射」という分野に出会いました。赤ちゃんがお母さんのお腹から出てくるために、そして、だいたい1歳くらいまで持っている、反射的な動きのことです。普通は成長と一緒に消えていくものですが、何らかの理由で残っていると、学習や行動に影響することがあります。
例えば、授業中にじっと座っていられない子がいたとします。今までは「集中力がない」「しつけの問題」と思われがちでしたが、座って勉強するのを邪魔してしまっている反射が、まだ体に残ったままかもしれない。そういう考え方もできるのです。これは、ぼくにとって大きな発見でした。
その子の行動を「問題」として見るのではなく、「体からのメッセージ」として受け取る。そうすると、どうサポートすればいいかが根本的に変わってくるんです。
※原始反射の残りと学習や行動との関係は、そう考える人がいる一方で、まだ確かめられてはいません。
出典:発達障害の子と原始反射|伸びていく方向へ(note)
結び
原始反射は、赤ちゃんが生きのびるために持って生まれた力です。それが残っているように見えるとき、その子は今も、体のどこかで踏んばっているのかもしれません。
「直す」より先に、その子の体がどう動きやすいかを見る。体あそびは、親子で楽しめる時間にもなります。
参考資料
- Goddard Blythe, S. (2004). The Well Balanced Child: Movement and Early Learning. Hawthorn Press.
- 前川喜平・小枝達也『写真でみる乳児健診の神経学的チェック法』南山堂
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
