はじめに
忘れ物が多い。じっと座っていられない。順番を待てずに話しはじめる。そんな姿に、親も先生も、そしてなにより本人が悩んでいることがあります。
ADHDは、しつけや性格の問題ではなく、脳の働き方の特性だと考えられています。このノートでは、ADHDとは何か、どんな困りごとが起きやすいか、他の発達障害との関係、家や学校でできるサポートを整理します。
1. ADHD(注意欠如・多動症)とは何か
ADHDは Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder の頭文字です。DSM-5では注意欠如・多動症と呼ばれ、次の2つのまとまりの症状で考えます。
- 不注意:集中が続かない、うっかりミスが多い、忘れ物やなくし物が多い、話を最後まで聞いていないように見える
- 多動性・衝動性:じっとしていられない、しゃべりすぎる、順番を待てない、思いついたらすぐ動いてしまう
DSM-5では、症状が12歳になる前から見られること、家と学校のように2つ以上の場面で見られること、生活に支障が出ていることなどが目安です。不注意が目立つタイプ、多動・衝動性が目立つタイプ、両方が目立つタイプがあります。
年齢とともに、多動は目立たなくなり、不注意の困りごとだけが大人になっても残るケースもあります。
2. ADHDの子に見られやすい困りごと
- 順序立てて動くのが苦手:支度の途中で別のことを始め、気づくと止まっている
- 時間の感覚がつかみにくい:「あと5分」がわからず、約束の時間に遅れる
- 待つのが苦手:順番抜かしや、人の話にかぶせて話してしまう
- 気持ちの切りかえがむずかしい:かっとなりやすく、あとから落ちこむ
- 興味のあることには没頭する:好きなゲームなら何時間でも続けられる
こうした失敗がくり返されると、「また怒られた」「どうせ自分はだめだ」という気持ちが積み重なり、自信をなくしてしまうことがあります。叱られる回数が多い子ほど、先に支えが必要です。
3. 他の発達障害との関係
ADHDは、ASDやLDなどと重なることがあります。ADHDとASDは、DSM-5では両方の診断をつけられます。
ワーキングメモリや実行機能の使いにくさがADHDの背景にあることがある、という研究もあります。ただし、原因の全体像は、まだ研究が続いている部分です。
ADHDの治療には、環境のくふうや行動面の支援のほか、医師の判断で薬が使われることもあります。薬を使うかどうかは、ご家庭と医師でよく話しあって決めます。
4. 家や学校でできるサポート
- やることを目に見える形にする:朝の支度チェックリスト、写真つきの手順表
- 指示は短く、一度にひとつ:終わったら次を伝える
- 気が散るものを減らす:机の上を片づける、席を前のほうにする
- 体を動かせる時間をつくる:座りつづけるより、おつかいや配り役を任せる
- できたことをすぐにほめる:叱る回数より、ほめる回数を増やす
- 時間をタイマーで見える化する:「あと何分」が目でわかるものを使う
結び
ADHDの子は、わざと忘れているのでも、怠けているのでもありません。「頭ではわかっているのに、体や注意がついてこない」ことが多いのです。
叱る前に、仕組みで助ける。その積み重ねが、子どもの自信を守ります。
参考資料
- American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
