はじめに
話をすれば理解も早いのに、音読になると読み間違えが多い。計算は得意なのに、文章題になるとつまずく。そんなアンバランスさに、悩む親御さんは少なくありません。
こうした様子の背景に、LDがあることがあります。このノートでは、LDとは何か、種類、他の発達障害との関係、家や学校でできるサポートを整理します。
1. LD(学習障害)とは何か
LDは Learning Disabilities(または Learning Disorders)の頭文字です。文部科学省は、1999年の報告で、LDを次のように説明しています。全般的な知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態、というものです。
原因は、中枢神経系の何らかの機能のかたよりが考えられていますが、はっきりとはわかっていません。視覚や聴覚の障害、知的障害、情緒の問題、環境の問題が直接の原因ではないとされています。
医学の診断基準DSM-5では、限局性学習症(SLD)と呼ばれ、読み、書き、算数のいずれかに困難がある場合に診断されます。教育の言葉の「LD」と、医学の言葉の「SLD」は、重なるものの完全に同じではありません。医学(DSM-5)の「限局性学習症」は判断のしかたが少し違い、診断は医師が総合的に行います。
2. LDの子に見られやすい困りごと
- 読むのが苦手:文字をとばす、行をまちがえる、ゆっくり一文字ずつ読む(ディスレクシア)
- 書くのが苦手:文字の形がとれない、書き写しが極端に遅い、ひらがなの書きまちがいが多い(書字障害)
- 計算が苦手:数の大小がつかみにくい、繰り上がり・繰り下がりでつまずく、九九がなかなか定着しない(計算障害)
- 推論が苦手:図形問題、文章題、因果関係を考える問題で苦労する
ここが見えにくい点です。ふだんの会話は問題なくできるため、「やればできるのに、やらない」と受けとられやすいのです。努力しているのに結果が出ない子は、見えないところで大きなストレスを抱えています。
3. 他の発達障害との関係
LDは、ADHDやASD、DCDと重なることがあります。たとえば、ADHDがあって不注意が強い子が、LDも併せもっていることも少なくありません。
LDがあるかどうかは、WISCなどの知能検査と、学力の検査、生活の様子を合わせて調べます。知能検査の中で、力の差が大きい子は、LDが疑われることもあります。ただし、検査の数字だけで決まるわけではありません。
4. 家や学校でできるサポート
- 得意な入り口を使う:読むのが苦手なら耳から、書くのが苦手なら話して伝える
- ICTの道具を取り入れる:タブレットの読み上げ、音声入力、計算機、書く量を減らすプリント
- ルビや拡大コピー、行を示す定規:見え方のつまずきを減らす
- 課題の量と時間を調整する:「全部やる」より「できるところを確実に」
- 学校に相談する:通級による指導や、テストでの配慮など、学校ごとにできることがあります
- 自信を守る:苦手さと本人のやる気は別だと、まわりが理解する
苦手を克服させるより、苦手を道具で補いながら、得意を伸ばしていく。その考え方が、LDの子の支援では大切にされています。
結び
LDの子は、頭が悪いのではなく、情報の入り方・出し方に偏りがあるだけです。
「どうしてできないの」ではなく、「どうやったらできるかな」と、一緒に探してあげてください。それだけで、勉強との距離が変わることがあります。
参考資料
- 文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」1999年
- American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
- 国立特別支援教育総合研究所 https://www.nise.go.jp/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
