はじめに
「うちの子、ひらがなをなかなか覚えない」「音読だけ、ひどくつっかえる」。友だちとの会話は楽しそうなのに、文字になると途端に苦しそうになる子がいます。
その背景に、ディスレクシアがあることがあります。このノートでは、ディスレクシアとは何か、日本語ではどんなふうに現れるのか、家や学校でできるサポートを整理します。
1. ディスレクシア(読み書き障害)とは何か
ディスレクシア(Dyslexia)は、学校(文部科学省)の定義では、全体的な知的発達に遅れはないものの、文字を読むこと・書くことに、とくに大きな困難がある特性です。「読み書き障害」とも呼ばれます。医学(DSM-5)の「限局性学習症」は判断のしかたが少し違い、診断は医師が総合的に行います。
LD(学習障害)のなかでも、とくに「読み」「書き」に困難がある場合を指します。DSM-5では、限局性学習症の中の「読字の困難」「書字表出の困難」にあたります。
原因については、ことばの音を聞き分けたり、音を操作したりする力(音韻の処理)に関係があるという研究が広く知られています。ただ、すべての人に同じ原因があるわけではなく、まだ研究が続いている部分もあります。
2. 日本語での現れ方
ディスレクシアは、言語によって現れ方がちがうと言われています。日本語には、ひらがな・カタカナ・漢字があり、それぞれ読み書きの難しさが少しずつちがいます。
- ひらがな・カタカナ:形が似た文字を取りちがえる、「ゃ」「っ」などの特殊な表記でつまずく
- 漢字:形が複雑で覚えにくい、部首や点画をまちがえる、読み方が複数あるものが混乱する
- 音読:一文字ずつ拾い読みする、行をとばす、勝手読み(ことばの意味から推測して読む)が多い
- 書き写し・作文:時間がかかる、鏡文字になる、書いた字を自分でも読み返せない
全員に同じ症状が出るわけではありません。「読みが苦手な子」と「書きが苦手な子」では、必要な支援もちがってきます。
3. LDや他の発達障害との関係
ディスレクシアはLDの一種として扱われることが多く、LD(学習障害)のページで紹介した「読む」「書く」の困難にあたります。
ADHDやDCDと重なる子もいます。たとえば、ADHDの子が、集中が続かずに読みが苦手な場合や、DCDの子が、手先の不器用さで書くのが苦手な場合もあるため、困りごとの根っこをよく見ることが大切です。
読み書きの検査は、医療機関や教育センター、大学の相談室などで受けられることがあります。
4. 家や学校でできるサポート
- 耳から入れる:読み上げ機能、音声教材、朗読の録音を使う
- 見やすくする:文字の拡大、行間を広げる、ルビをふる、読む行だけ見える定規を使う
- 書く量を減らす:タブレットやパソコン、音声入力で答えてもよいことにする
- テストや宿題での配慮を相談する:時間の延長、問題文の読み上げ、別の方法での回答
- 得意なことで自信を育てる:読み書き以外の場面で、「できる」を増やす
「何度も書いて覚えなさい」は、ディスレクシアの子にとって、つらい練習になることがあります。やり方を変えて、成果が出るルートを探してあげてください。
結び
ディスレクシアの子は、努力が足りないのではなく、文字という入り口が通りにくいだけです。
読み書きの苦手さだけで、考える力や想像する力は判断できません。道具を味方にして、その力を外に出せる形を一緒に探しましょう。
参考資料
- American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
- 文部科学省「学習障害児に対する指導について(報告)」1999年
- 国立特別支援教育総合研究所 https://www.nise.go.jp/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
