はじめに
「宿題を始めるまでに時間がかかる」「持ち物の準備が毎回ぬける」「ゲームをやめられない」。こうした様子の背景には、実行機能の使いにくさがあるかもしれません。
このノートでは、実行機能とは何か、弱いとどんな困りごとが起きるのか、発達障害との関係、家や学校でできるサポートを整理します。
1. 実行機能とは何か
実行機能は、目標を達成するために、考え・行動・感情を調整する頭の働きの総称です。「頭の中の司令塔」にたとえられます。
研究者によって分け方に違いはありますが、よく挙げられるのは次のような働きです。
- 計画:やることの順番を考え、見通しを立てる
- 抑制:衝動をおさえる、余計な刺激を無視する
- 切りかえ:状況に合わせて、考えや行動を変える
- ワーキングメモリ:情報を覚えておきながら使う
どれも、大人になるにつれて、ゆっくり育っていく力だと考えられています。
2. 弱いと、どんな困りごとが起きる?
- 始められない:やることはわかっていても、最初の一歩が出ない
- 段取りが組めない:どこから手をつけるか、迷って固まる
- やめられない・切りかえられない:遊びから片づけに移れない
- 衝動的に動く:考える前に口や手が出る
- 時間の見通しが立たない:あと何分かかるかの見積もりがずれる
- 整理整頓が苦手:部屋やカバンが、すぐ散らかる
こうした姿は、「怠けている」「だらしない」と見られがちです。けれども、やる気の問題ではなく、頭の中の調整のしにくさであることがあります。
3. 実行機能と発達障害の関係
ADHD(注意欠如・多動症)のある子には、実行機能の使いにくさがよく見られると言われています。自閉スペクトラム症(ASD)では、特に「切りかえ」や「計画」に苦手さが出る子もいます。
ただし、実行機能が弱い=発達障害、ではありません。診断のない子にも、得意不得意はあります。また、年齢によって育ち方も異なります。
「実行機能を直接鍛える方法」については、研究が続いている段階です。まずは、日々の困りごとが減るように、環境や伝え方を整えることから始めるのが現実的です。
4. 家や学校でできるサポート
- やることを小さく分ける:「宿題をする」を「ノートを出す」「1問解く」に分ける
- 順番を見える形にする:チェックリストや手順表を使う(視覚支援)
- 切りかえの予告をする:「あと5分で終わりね」とタイマーを見せる
- 決まった場所・決まった時間に:習慣にして、考える負担を減らす
- 始めるときは一緒に:最初の1つだけ手伝うと、動き出せる子もいる
- 失敗を責めず、仕組みを見直す:「どうしたらできそう?」と一緒に考える
結び
実行機能の弱さは、見えにくく、誤解されやすい特性です。「やればできるのに」と思うときほど、頭の中の調整が追いついていないのかもしれません。
責める前に、やることを小さくして、見える形にする。そこから、その子なりの動き方が見えてきます。
参考資料
- Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology, 64, 135–168.
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
