Nバック課題とは?意味と具体例
東北大学院卒の発達障害学習ノート

たぶ先生(いわおひろあき) ・ 2026.10.13

はじめに

「Nバック」という言葉は、脳トレのアプリや、ワーキングメモリを鍛える方法として目にすることがあります。

このノートでは、Nバック課題とはどんな課題なのか、ワーキングメモリとどう関係するのか、そして「やれば頭がよくなる」のかどうかについて、研究でわかっていることを整理します。

1. Nバック課題とは何か

Nバック課題は、文字や数字、絵、音などが一つずつ順番に出てきて、いま出てきたものが「N個前」と同じかどうかを答え続ける課題です。1958年にキルヒナーが、すぐ変わる情報を短いあいだ覚えておく力の研究で使ったのが始まりとされ、いまはワーキングメモリの研究で広く使われています。

  • 1バック:ひとつ前と同じなら「同じ」と答える(例:り・ん・ん → 3つ目で「同じ」)
  • 2バック:ふたつ前と同じなら「同じ」と答える(例:り・ん・り → 3つ目で「同じ」)
  • Nの数が大きくなるほど、覚えておく数が増え、むずかしくなります

新しいものが出てくるたびに、覚えている列を一つずつずらしていかなければなりません。この「覚えておく」と「入れかえる」を同時に続けるところが、ワーキングメモリをよく使う理由です。

2. ワーキングメモリとの関係

Nバック課題は、ワーキングメモリの働きを調べるための課題として生まれました。研究では、Nバック課題をしているときの脳の働きを測ったり、成績から、ワーキングメモリの使い方を調べたりします。

その後、「この課題をくり返し練習すれば、ワーキングメモリそのものが鍛えられるのではないか」と考えられ、訓練用のアプリやプログラムも作られました。

3. 練習すれば、力は伸びる?

くり返し練習すると、Nバック課題そのものの成績は上がります。ただし、その力が、読み書きや計算、学校の成績のようなほかの力にまで広がるかについては、研究の結論は分かれています。多くの研究をまとめた分析では、ほかの力への効果ははっきりしない、という結果も出ています。練習した課題の成績は上がります。練習していない近い課題への効果は、研究によって結果が分かれます。学力や知能など離れた力への効果(遠い転移)は確認されていません。

発達障害のある子どもについても同じで、「Nバックを毎日やればワーキングメモリの弱さがなくなる」とは、今のところ言えません。困りごとへの手当ては、ワーキングメモリのページで紹介したような、伝え方や道具のくふうのほうが確かです。

4. 家で取り入れるなら

  • 遊びとして楽しむ:トランプを1枚ずつめくって「ひとつ前と同じ色?」と当てっこする
  • 1バックから始める:できたら2バックへ。むずかしすぎると、苦手意識だけが残ります
  • 短く終える:数分で十分。疲れたら終わりにする
  • 点数で比べない:きょうだいや友だちとの比べっこにしない
  • 「これで勉強ができるようになる」と期待しすぎない:楽しめる範囲で

結び

Nバック課題は、ワーキングメモリの働きを知るための、よくできた物差しです。

ただ、物差しで測る練習をしても、背が伸びるわけではありません。子どもが楽しめる遊びとして使いながら、毎日の困りごとには、伝え方や環境のくふうで向きあっていきましょう。

参考資料

  • Kirchner, W. K. (1958). Age differences in short-term retention of rapidly changing information. Journal of Experimental Psychology, 55(4), 352–358.
  • Melby-Lervåg, M., & Hulme, C. (2013). Is working memory training effective? A meta-analytic review. Developmental Psychology, 49(2), 270–291.
  • Melby-Lervåg, M., Redick, T. S., & Hulme, C. (2016). Working memory training does not improve performance on measures of intelligence or other measures of "far transfer". Perspectives on Psychological Science, 11(4), 512–534.

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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。

保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー

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