はじめに
「ことばがなかなか出ない」「ほかの子より理解がゆっくり」。そんな心配から、知的障害という言葉に行き着く方もいます。
大きな不安を感じる言葉かもしれません。でも、どんな状態をさすのかを知ると、その子に合った学び方や、受けられる支援が見えてきます。このノートでは、知的障害の定義、程度の分け方、学びの場、家や学校でできるサポートを整理します。
1. 知的障害とは何か
厚生労働省の調査などでは、知的障害は、知的な働きに遅れがあり、それが発達期(子どものころ)に始まり(行政の調査では、おおむね18歳までとされることが多い)、日常生活に支障が出ているため、何らかの特別な援助を必要とする状態と説明されています。
医学の診断基準DSM-5では、知的発達症(知的能力障害)と呼ばれます。ポイントは、知的機能(学ぶ・考える・問題を解決する)の困難だけでなく、適応機能(日常生活のこと、人とのやりとり、お金や時間のやりくりなど)の困難があることです。
以前は、IQ(知能指数)の数値で線を引いて判断することが多くありました。現在は、IQの数字だけではなく、実際の生活でどれくらい支えが必要かを重く見ます。
2. 程度の分け方と、よくある困りごと
DSM-5では、困りごとの重さを、軽度・中等度・重度・最重度の4段階に分けます。分類は、IQだけでなく、生活の場面でどのくらい支援が必要かで決まります。支援の内容は、一人ひとり大きくちがいます。
- ことばや理解:ことばの発達がゆっくり、長い説明や抽象的な話がつかみにくい
- 学習:読み書き・計算の習得に時間がかかる、経験を新しい場面に生かしにくい
- 生活のこと:身じたく、金銭管理、危険の判断などに支えが必要
- 人とのやりとり:だまされやすい、相手の意図を読みにくい
一方で、人懐っこさ、素直さ、コツコツ続ける力など、その子らしい強みもあります。苦手だけで見ないことが大切です。
3. 発達障害との関係と、使える制度
知的障害は、ASDやADHD、DCDなど、ほかの発達障害と重なることがあります。たとえば、知的障害をともなうASDの子どももいます。知的障害は、日本の法律上、発達障害とは別の枠で扱われることもありますが、実際の支援の場では連続して考えられています。
知的障害があると判断された場合、療育手帳を申請できます。名前や判定のしかた、交付するかどうかは自治体によって違います。受けられるサービスも変わります。学びの場としては、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校などがあり、本人の様子とご家庭の希望をふまえて検討されます。
手帳や学びの場の選択は、どれが正しいと決まるものではありません。お子さんにとって、今いちばん力が伸びる場所を、一緒に探します。
4. 家や学校でできるサポート
- 具体的に、短く、見せながら伝える:実物、写真、絵、動作を一緒に見せる
- スモールステップで教える:一つの動作を小さく分け、できたところをほめて次へ進む
- くり返しの経験で身につける:身じたく、買い物、手伝いなど、生活の中で練習する
- 見通しを持てるようにする:一日の予定をイラストで示す
- 選べる機会をつくる:「どっちがいい?」と、小さな選択を任せる
- 将来を見すえて早めに相談する:学校、福祉サービス、将来の進路について、地域の窓口に
力の伸び方は、人によって、時期によってちがいます。ほかの子と比べず、その子の「昨日より」を見ていきましょう。
結び
知的障害は、「学ぶペースがゆっくりな子」と言いかえられることもありますが、必要な支えの大きさはさまざまです。
大切なのは、できないことを数えるより、その子がわかる方法で伝え、毎日の暮らしの中で「できた」を重ねていくことです。
参考資料
- American Psychiatric Association『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』日本精神神経学会(日本語版用語監修)、医学書院、2014年
- 厚生労働省「知的障害児(者)基礎調査」
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
