はじめに
「どうせ私なんて」「ぼくはバカだから」。子どもの口からこんな言葉が出ると、胸が痛みます。
この気持ちの背景には、自己肯定感の低下があるかもしれません。このノートでは、自己肯定感とは何か、下がりやすい背景、発達障害との関係、家でできる関わり方を整理します。
1. 自己肯定感とは何か
自己肯定感は、うまくいかないところも含めて、「このままの自分でいい」「自分には価値がある」と感じられる気持ちのことです。
「自信」と似ていますが、少し違います。自信は「できる」という感覚で、成功や得意なことに支えられます。自己肯定感は、できてもできなくても、自分はここにいていいという、土台の感覚です。
診断名のある専門用語ではなく、教育や心理の場面で広く使われている言葉です。測り方も一つではありません。
2. 下がりやすい背景と、具体例
発達に特性のある子は、周りと同じようにできない経験を重ねやすく、自己肯定感が下がりやすいと言われています。たとえば、次のような場面です。
- 何度も注意される:忘れ物、うっかり、じっとしていられない
- 頑張っているのに結果が出ない:字が書きにくい、計算が遅い
- 友だちとうまくいかない:誤解される、仲間に入れない
- 比べられる:きょうだいや同級生と、できなさを比べられる
- 「どうして」と責められる:理由を説明できないまま、叱られ続ける
こうした経験が積み重なると、「自分はダメだ」という思いが育ちやすくなります。
3. 発達障害との関係
発達障害のある子は、特性そのものが原因というより、特性に合わない環境で、うまくいかない経験を重ねることで、自己肯定感が下がることが多いと考えられています。
その結果、不登校、強い不安、気分の落ちこみ、反抗的な態度など、二次的な困りごとにつながることもあります。逆に、理解のある環境で「できた」を重ねられた子は、自己肯定感が守られやすいといわれます。
大切なのは、特性を直そうとするより先に、その子が安心できる居場所と関係を整えることです。
4. 家や学校でできる関わり方
- 結果より、取り組みをほめる:「やってみたね」「最後まで座れたね」
- できた経験を作る:その子の力に合う、少し易しい課題から
- 人格を責めず、行動だけ伝える:「だめな子」ではなく「これは危ないよ」
- 比べない:きょうだいや他の子ではなく、昨日のその子と比べる
- 得意なこと、好きなことを認める:役割を任せ、「ありがとう」を伝える
- 大人も失敗を話す:「間違えても大丈夫」と、見せる
5. たぶのメモ
手伝いすぎ、やってあげすぎは、その子の力を、かえって下げてしまいます。オーバーヘルプという言い方で、わたしは教わりました。だから、手を引いて、ぐっとこらえて、じっと見守ります。
この時間を見守ることで、その子の葛藤する力、ストレスに耐える力が育っていく。自分で悩んで、自分で決めて飛び込むことで、内側からのやる気が立ちあがってくる。そうやって、自己肯定感や「自分で選ぶ力」が、すこしずつ育ってくるのだと思います。
「放っておく」ためには、その子の自主性を信じていなければいけません。何かあったら、すぐ助けに行くよ。ここに、控えているよ。そうした構えをキープしつつ、見守るのです。
出典:発達障害の子に「手を出さない」支援|その先の願いへ(note)
結び
自己肯定感は、「ほめて育てる」だけで育つものではありません。「失敗しても、ここにいていい」と感じられる経験の積み重ねで育ちます。
できたことが少ない日も、そのままの子どもを受け止めて、「あなたがいてくれてよかった」と伝えてみてください。
参考資料
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
- 国立特別支援教育総合研究所 https://www.nise.go.jp/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
