はじめに
「何度言っても聞いてくれない」「毎日叱ってばかりで、自分もつらい」。子育てで、そう感じている保護者は少なくありません。
そんなとき、保護者が子どもへの関わり方のコツを学ぶ場があります。それがペアレントトレーニングです。このノートでは、その内容と、発達障害との関係、始める前に知っておきたいことを整理します。
1. ペアレントトレーニングとは何か
ペアレントトレーニングは、保護者が、子どもの行動の見方や関わり方を学ぶグループ形式の講座です。「ペアトレ」と略されます。日本では、自治体、療育センター、病院、親の会などで行われています。
大切なことがあります。ペアレントトレーニングは、「親の育て方が悪いから受ける」ものではありません。子どもの特性に合った関わり方を、保護者が知るためのものです。子どもの様子を変えるというより、親子の関係をラクにするための場です。
考え方のもとには、行動の前後を見るABA(応用行動分析)があります。
2. 内容と具体例
講座によって細かい内容は異なりますが、よく扱われるのは次のようなことです。
- 行動を3つに分けて見る:「増やしたい行動」「減らしたい行動」「危ない行動」に分ける
- 具体的に観察する:「だらしない」ではなく「靴を脱いだまま上がる」と言いかえる
- よい行動をほめる:できたことに注目して、すぐに認める
- 伝え方をくふうする:短く、具体的に、「〜しないで」より「〜してね」
- 危ない・やめさせたい行動への対応:叱る前にできること、冷静に対応する方法
毎回、宿題があるのが一般的です。家で試して、うまくいった・いかなかったを、次の回に持ち寄ります。同じ立場の保護者と話せる場でもあります。
3. 発達障害との関係
ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)のある子は、言葉だけの注意が届きにくかったり、叱られても行動が変わりにくかったりすることがあります。そのぶん、保護者が疲れやすくなります。
ペアレントトレーニングは、こうした子の保護者を支える方法のひとつとして、国内でも広がっています。参加した保護者のストレスが減ることや、親子の関係が落ち着くことが報告されています。
ただ、効果の出方は人によって違います。合わないと感じたら、無理に続けなくて大丈夫です。
4. 始める前に・家でできること
- まず相談する:自治体の発達相談窓口、療育センター、通っている病院で、講座があるか聞いてみる
- 「困った」を1つだけ決める:全部を直そうとしない
- ほめる場面を毎日1つ探す:小さなことでよい
- 自分を責めない:うまくいかない日があるのは当たり前
- 家族で情報を共有する:父母・祖父母で、関わり方をそろえる
結び
ペアレントトレーニングは、保護者が「もっと頑張る」ための場ではありません。「こうするとラクになる」を、安心して学べる場です。
子育てを一人で抱え込まないための入口として、使えるものは使ってみてください。
参考資料
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
- 岩坂英巳(編著)『AD/HDのペアレント・トレーニングガイドブック』じほう
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
