はじめに
「次に何をするのかわからなくて、固まってしまう」「いつもと違うと、不安で泣いてしまう」。そんな子には、周りの環境をわかりやすく整えるだけで、落ち着いて過ごせることがあります。
その考え方が構造化です。このノートでは、構造化とは何か、TEACCH(ティーチ)との関係、自閉スペクトラム症との関わり、家でできる工夫を整理します。
1. 構造化(TEACCH)とは何か
TEACCHは、アメリカのノースカロライナ大学で、エリック・ショプラーらを中心に生まれた、自閉症の人と家族への支援プログラムです。名前は Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Children の頭文字からきています。
TEACCHの大切な考え方は、「自閉症の特性を無理になくす」のではなく、特性を理解したうえで、環境の側を整えることです。その具体的な方法が構造化です。
構造化とは、「どこで」「いつ」「何を」「どれだけ」「終わったら何があるか」を、言葉だけでなく、見てわかる形で伝えることです。
2. 構造化の4つの柱と具体例
- 物理的構造化:場所と活動を結びつける。「勉強はこの机」「休憩はこのソファ」と決め、仕切りや棚で区切る
- スケジュール:一日の流れを、絵・写真・文字で見せる。終わったカードは外す、裏返す
- ワークシステム:作業の「量」「終わりの目印」「終わったら何をするか」を目で見てわかるようにする。左のかごから右のかごへ移す、など
- 視覚的構造化:手順やルールを、絵や色分け、ラベルで示す
「言葉で聞くより、目で見たほうがわかりやすい」という特性を、うまく生かす方法です。
3. 構造化と自閉スペクトラム症の関係
自閉スペクトラム症(ASD)のある子は、見通しを持つことが苦手で、急な変更に強い不安を感じることがあります。耳から入った言葉は消えてしまうのに、目で見たものは残る、という子も少なくありません。
構造化は、こうした特性に合わせて、「わからない」を減らすための支援です。わからない不安が減ると、かんしゃくや固まりが減り、本来の力を出しやすくなる子がいます。
一方で、全員に同じやり方が合うわけではありません。ASDでない子でも、見通しがあると安心する子は多くいます。その子に必要な量と形を見きわめることが大切です。
4. 家や学校でできるサポート
- 朝の流れを絵カードにする:起きる→顔を洗う→着替える→朝ごはん、を順に並べる
- 「いつまで」を見える化する:タイマーや砂時計で、終わりを示す
- 場所に役割を持たせる:宿題はこの机、おもちゃはこの棚、と決める
- 予定が変わるときは、早めに見せて伝える:「変更」のカードを使うのも手
- 少しずつ自分でできるようにしていく:慣れてきたら、支えを減らす
結び
構造化は、子どもを型にはめるものではありません。「わからなくて困っている」に先回りして、安心して動ける環境を作ることです。
最初から完璧に整えなくて大丈夫です。ひとつだけ、見える形にしてみる。その小さな変化から、その子に合う形が見えてきます。
参考資料
- 佐々木正美『自閉症児のためのTEACCHハンドブック』学研
- 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
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書いた人 たぶ先生(いわおひろあき)
東北大学大学院文学研究科で社会学(理論社会学・地域社会学)を学び、博士後期課程まで進む(博士論文は未提出)。早稲田大学卒。発達特性のある子どもたちとのマンツーマン療育・教育に2010年から携わる。仙台で発達障害専門の家庭教師としてスタートし、児童発達支援・放課後等デイサービスの現場、複数施設のマネジメントを経験。いまは発達障害のインタビュー研究を続けながら、オンライン家庭教師・療育相談「いっかく」を開いている。
保育士/中学校・高等学校教員専修免許(社会・公民)/文学修士(専攻は社会学)/社会福祉士/児童発達支援管理責任者/産業カウンセラー
